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インスタレーションへの挑戦。

 

珍しいな、

 

大浦がブログ連投だってよ。暇なんかな。

 

 

 

作業中の山内ゆうさん
作業中の山内ゆうさん

 

 

ということで、

前記事  に登場した紙布織家の山内ゆうさんの展示音楽について、

 

収まりきらないので出張記事です。

 

 

以下作品解説(パンフレットより引用)

 

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「見えないケイイ。」山内ゆう

 

時布「ただいま と おかえり」

 

経糸に石州和紙を、緯糸には山内の近所の空き家からいただいたカレンダーを使用して、手織りしました。

どの紙も2.5ミリ幅に切って糸にしていますが、紙の厚みや、撚りの強弱によって、様々な風合いを見せています。また、カレンダー自体のプリントが模様のように浮き上がっており、所々に見える形跡(写真や数字、書き込みの跡など)を見始めると、まるで宝探しをしているような感覚を味わうことができます。

 

・・・

 

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「見えないケイイ。」ですが

元々7月頭から温泉津の時津風にて展示が行われており、

実は私も一度足を運んでいたのでした。

 

後日STAFF経由でお話を頂き、二つ返事でお受けしました。

 

仕事えげつないほど溜まってたのにね♡

 

インスタレーション的な演出のアプローチを計画しているとのことで、

過去の体験から情報を高速で引っ張り出そうにも、

 

「インスタレーションの音響はそういえば個人ではやったことないやん」

 

そう。大浦、インスタレーションへの挑戦。である。

 

 

中旬に差し掛かるころ、

展示現場を改めて、"そういう目"で見学させていただきました。

 

"そういう目"で。

 

 

その際に、お世話になっている小林新也さん(ギャラリー時)と作家の山内ゆうさんから、

 

音響制作へのケイイ、コンセプト等をお聞きしました。

 

すると、理解が深まったのか、安い言い方にはなりますが…

 

 

見え方が全然変わってくるんですね。

 

 

分かって観ていたはずの部分も、具体化されると質量が変わる。

 

 

突然目の前に現れた「空間のディテール」

ちゃんと最初から感じられましたから…感受性に乏しいとか言わないで…

 

 

このエネルギーの塊を少しでも観る人に翻訳、浸透させること

 

それが私の今回の役割なのだと瞬時に理解しました。

緯糸から滲みだす日々の営み
緯糸から滲みだす日々の営み

 

 

実はもうその瞬間から私の中で構成は決まっていました。

 

理解した瞬間、エネルギーに打たれたような感覚で、

 

鳴り出した未だ聞かぬ音を、記憶に刻むのに必死でした。

 

 

受け取ったインスピレーションに誤解がないか確かめるべく、

 

小林さんと山内さんをお待たせしたまま、細部の撮影を行いました。

本当に申し訳ございません。

 

 

一通り撮影&確認して、

 

脳内で構成を組み立てた後、

 

お二人にその場でプランをご提案しました。

 

 

上手く言語化できていたか定かではないのですが。

 

経糸と緯糸をそれぞれ何に見立てるのか、

どのようにして始まり、いかにして終わるのか。

 

等をお伝えしました。

展示にあった箒。実際に収録にも使用された。レレレ
展示にあった箒。実際に収録にも使用された。レレレ

 

 

それにしても

 

 

なんであの時、小林さん途中からあんなずっと半笑いやったんやろ…

 

 

 

あかん、めっっちゃ気になる…

 

 

私「という感じで考えてるんですが、どうでしょう…?」

 

小「あ、nはいw それでお願いwしますw」

 

 

みたいな感じ、あれ何やったんやろ…

 

 

気になりながらも、制作開始です。

 

小林さんは

「最悪、今回の展示期間に間に合わなくても」

と仰ってくださいましたが、

 

もはやそれは作家にとっては強力な煽りですよね。

 

ここから足労Daysが始まりました。

 

まずは川本町にあるアトリエにて、

実際の作業音を収録します!

 

布ってこうやって作るんだ!!

 

 

と小並感リアクションしか繰り出せないまま収録は滞りなく進んでいきます。

 

 

楽器のマイキングは一通りわかるんですが、

 

こういった器具が、どこが音が鳴るのか、

というのは案外分からないもので…

 

「意外とこの部分がそれっぽい音が鳴りますよ」

 

と優しくゆうさんにリードしていただき、

 

 

無事全行程の音声を収録しました。

思ってたよりすんごい音が鳴った場所
思ってたよりすんごい音が鳴った場所

ハウエバー、思っていたよりも外部の音(虫の声や風の音)が大きく、

 

特に繰り返し使用を想定していた機織機の音声に

やむを得ず大きめの環境ノイズが乗ってしまいました。

 

 

機織機。なんかすごい(小並感)
機織機。なんかすごい(小並感)

 

 

しかしその場で気付けていたため、

 

収録語、そのままのセッティングでノイズ特性のみ収録しておきました。

 

これの逆相により、後から背景ノイズは大幅に抑制できます。

 

後は鳥の声が被っている箇所をどうするか…

腕の見せ所ですぅ

 

 

また、イメージの中にある生活音に近いものが録れそうな場所はないか、

 

家中を物色する大浦。きもちわるいね

 

 

木のまな板、軋む床、日本家屋の玄関、ご近所さんの遠くで聞こえる話し声

 

その他多数の音源を確保。

 

井戸の音なんかも収録させてもらいました!

 

 

 

 

その足で飯南町の友人のところへ向かいました。

 

この作品には赤ちゃんの泣き声が必須だったのです。

その辺に転がってるものでもないので、本当に助かりました…

 

無事赤ちゃんの泣き声GET!!

 

他にも小学生KIDsの力を借りて、学校の暮らし的な音を収録

 

ギャラリーにも改めて赴き、すべての家具の音を収録。

 

 

また後日、前記事にも登場した山藤さんマルチタレントドレッド兄ぃに

 

にもご協力いただき、神楽笛の収録を、ギャラリー時にて行いました。

 

収録された場所でまたその音源が再現されるという

ある種フラクタル的な取り組みです。

 

 

ほんの一瞬の使用箇所にも関わらず、3曲も吹いてくださいました。

 

「合うものを使ってください」と…。

 

山藤さん、いつも本当にありがとうございます。

 

 

 

この時点で、予算度外視の暴走モードに入ってしまった大浦。採算は取れるのか…

 

 

さて…

 

持ち帰った音声を全て確認&整音していきます…

 

つらいつらい作業です。おててとおこしがもげますよ。

 

けれど必要な作業です。没入感を左右します。

 

 

かなりの分量を収録したため、

これだけで1日がぶっ飛んでいきました…笑

膨大な音声の中から使用するものを決めて、

時間軸に沿って、組み立てていきます。

 

作業音、生活音、機織機

大きく分けて3つのセクションですが、

 

エフェクトや定位(左右のPAN)、モノラルかステレオ

などによって、トラック数は20を超えます。

 

生活音に関しては、複数のものを組み合わせて

音場を構成していきます。


また、全体の尺を1~2分でご依頼いただいていたので、

何でもかんでも詰めればいいわけではないのです。

 

 

あっちゅうまなんよ…1分って、はやいんよ…

 

 

 

空き家の元所有者様が推定90歳程でお亡くなりになったということで、

音源の尺は、90秒のループ構成とすることにしました。

 

毅然とした要約が必要とされる現場です。

 

 

しかも、

・展示会場で再生されること

・チェックでしっかりとモニターされること

・後々告知用動画などに使用する可能性があること

 

これらを全て加味した上で、音選びをしていくことになります。

 

 

イヤホンで聞こえた音は、会場では聴こえないかもしれない。

 

 

一番伝えたい音は、各セクションどれなのか。

 

会場で右のスピーカーに近づいた時、初めて聴こえる気配があってもいいかもしれない。

 

 

 

そんなことを考えていると、ドツボにハマっていきそうで、何度も耳と頭をリセットしました。

 

 

小林さんは「音楽ではないんですけど、、、」

と仰ってはいましたが、

 

時間軸の流れと音像の対比を作るために薄くピアノを演奏しました。

 

 

とても悩みました。

が、これは重ねるべきだったと強く思います。

 

 

また、細かい話ですが、

背景でうっすらとノイズ(音響機器のホワイトノイズのサンプリング)を再生しました。

 

一定ではなく、1900年代前半のものから2000年代のものに、

シーンが変わる毎に、ノイズも時を重ねています。

 

 

 

 

インスタレーション作品のreferenceをしっかりと感じに行く暇もないので、

 

記憶を頼りに、エッセンスを紡ぎだしていきます。

こういう時ばかりは、都会での体験は有用だなと思い知らされます。

 

都会の体験だけでは本当の意味で生きてはいけません…

 

 

ともすれば博物館の展示コーナーのような説明的なものになってしまいそうで…

 

曖昧に暈すことも、あるいは選択しなければならないなと感じ、

高品質な残響エフェクトを新たに導入して使用しました。

 

また、時を刻む機織機の音は、

素のままでは、「カタンっ」と軽い印象の為、

低域を付加して重みのある音色に近づけました。

 

 

 

こうしておおよそ10日で音源が完成しました。早っ…怖っ…

 

 

 しかし大浦選手、予算を大幅に超えて着地が乱れたか…!!

 

 

後日、音響が加わった展示に足を運びました。

 

あ!スピーカーがついてる!!

 

 

今回は、左右から異なるセクションが流れており、

 

現在側、過去側、どちらから聴くかによって、

「時布」の見え方が異なってくるように意図しています。

 

お願い通りに設置してくださり、ありがとうございます!!


 

終了後、お祭り会場にて小林さんとお会いした際、

 

何かを食しながら「めっひゃよあっあえふ👍」と必死に仰っていました。

 

 

 

たぶん「めっちゃよかったです」だと思うことにしました。

 

 

 

山内ゆうさんともお話しできて、

お二人とも没入感についてもご感想をくださり、

狙い通り演出できたかな、と嬉しく思いました。

 

そんな感じで、告知に入ろうというタイミングですが、

展示の方が終了してしまいました…!!!!!

 

今後また海外展開などのお話もあるので、

また聴いていただける際にはいち早く書こう、双子葉。

 

 

 

あぁ、備忘録的な感じの記事になってしまいましたね。

 

では、また。